やさしいふう太の記憶力

ふう太は小さな頃からやさしい子でした。

”ありがとう” と言ってもらえることに喜びを感じるタイプで、とにかく親切です。

アイスを買ってあげれば
『お母さんはいらないの?』
『ほら、ぼくのわけてあげる!』

スーパーでお買い物をすれば
『それ持ってあげるよ!』
『え?重いって?大丈夫だよ、まかせて!』

他にも、出かけた先で泣いている赤ちゃんがいれば
『赤ちゃんないてるねぇ』と神妙な顔をしたり、慰めにいったり。

公園で、泣いている4歳くらいの男の子の頭をなでなでしたこともありましたっけ。当時たぶんふう太2歳。
なでられた男の子は
(なんだ?このちっこいヤツ!?)
といった感じで、涙ひっこんでました。

でですね、
ふう太が5歳の頃だったかな?
ある日、私、とても疲れていたんです。
リビングで遊んでいるふう太に声をかけました。
『お母さんすごく疲れちゃって。すこし静かに遊んでてくれる?』って。

そうしたら、ふう太は

やさしいです♡
幸せな気持ちになって、ソファに横になりました。


その10秒後

いやいやいや、

さっきあんなにやさしい言葉かけてくれたじゃん!?

あんな慈愛に満ちた母馬みたいな目ぇしてさ!?

あんたの記憶何秒もつのよ!?

10秒!?
10秒が限界なの!?

あの歌は、当時ふう太がハマった”ウルトラマンオーブ”のオープニングです。

お母さんのために一人で静かに遊ぼうと思った直後、頭の中に流れてきちゃったんでしょうな、ウルトラマンが。

『…ねぇ、静かにしててくれるんじゃなかった?』
『ハッ!!ごめんごめん!ふう君うっかりしちゃったよ~テヘペロ』

記憶力にいささか問題のあるふう太のお話でした。

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