移動教室に行けなかった話③

さてさて、続きです。

だんだんと移動教室の日が近づいてきます。

ふう太はというと、

江戸村楽しみだな♪
忍者屋敷すっごい興味ある♪
東照宮も面白そう♪

うん、いいじゃないですか♪
期待に胸ぷくぷくしてるじゃんか!

でも、相変わらず

そこで私は1つ提案をしました。

『夜寝付くまでが嫌なんだよね?
さみしいし、不安だし、緊張するんだよね?

そしたらさ、夜お布団入ってから楽しいことを考えるの。
でも、不安なときに楽しいことは思いつかないだろうから、
あらかじめ布団のなかで何を考えるかを決めておくのはどう?

ほら、ドリフのカトちゃんの階段落ちを、頭の中で細かく再現するとか~』


『ん~・・・』

のってきません。

『落語のお菊さんのヤツあるじゃん。
あれを頭のなかで唱えるってのはどう?』


『ん~~・・・・・』

だめか。



『じゃあほら、いつも行くスーパーあるでしょ?

頭の中で、スーパーの入り口から入って~、

最初この辺に特売の野菜があって、その裏側がバナナでしょ?

となりはキウイ。

向かいの棚には贈答用の高級フルーツなんかがあって、

奥に行くと~・・・って、店内の風景を鮮明に思い描くの。

ネガティブな考えを頭から追い出すテクニックとして聞いたことあるよ。』

『・・・うう~~~ん・・・・・』

気に入らないらしい。

・・・ほう、そうかい。
対策する気あるのかな?


日光へ出発する日が近づくにつれて、夜のことを心配する頻度が増していきました。

『夜やだ~』
『行きたくないな~』
『あー気が重い~』

いつまでたってもぐちぐち言うだけで、いっこうに前向きに考えようとしないふう太につき合うのも嫌になってきました。


出発の5日前くらいでしたか、またぐちぐち始めたところで、遮るように強めに言いました。

『あなたは去年移動教室に行ったことを後悔してるの?』
『いや・・・してない・・・』

『全然楽しくなかったの?』
『楽しかった・・・』

『日光は行かないの?江戸村とか、いろいろ楽しみだって言ってたじゃない』
『・・・行く・・・』

『行くって決めたなら、うだうだ言ってたってしかたないでしょう?夜が嫌なのはわかったけど、うだうだぐちぐち言うことで不安が解消されるの?』
『・・・・・・・・』

『愚痴を言うだけで何も対策を考えようともしない、そんなんで物事がうまくいくことはないと思うよ』

ぐうの音も出ない正論をはいてしまい、それからふう太は不安や愚痴をこぼさなくなってしまいました。

私はここで対応を間違えたと思っています。


そして、移動教室2日前の晩ご飯中、それまで明るかったふう太の表情が突然変わりました。
ちょっと驚いたような、目が泳ぐような、なんともいえないこの表情(^_^;)

(あ、これは何かまずいことがある時の顔だ。もー本当にわかりやすいなぁ)

『・・・どうした?宿題学校に忘れてきた?』

『いや、忘れてない。』

『そう・・・。なにか間に合わない提出物があるとか?』

『・・・ううん、そういうんじゃない・・・大丈夫・・・』

『そう?・・・』
(わ~、これ絶対大丈夫じゃないやつ~)

そう思いながら、それ以上聞かずに見守っていると、
静かに席を立ち、薬類の引き出しから体温計を取り出し、おもむろに脇に挟んだふう太・・・

『えぇっ!?具合わるいのっ!?』

幸い熱はありませんでしたが、直前になって体調を崩してしまったふう太。

風邪?これから悪化するのかな??

さぁどうしましょう!?

(つづく)

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