床下のカオナシ

わが家にはピアノがあります。
私が幼稚園のころから弾いている、古いけれど大切なピアノです。

現在2階においてあるピアノを、近々1階のリビングに移動させることになりました。

一般的なアップライトピアノの重量は200~260kgだそうです。

2階のピアノの下の床は、その重量に耐えられるよう、家を建てるときに補強をしておきました。

さて、移動先のリビングのはじっこの床、ピアノを置く予定の場所は、強度的に大丈夫なのかな?という疑問が、わが夫、あつお君のなかで湧き出てまいりました。

あ『よし、ちょっと潜ってくるわ。』
私『は?どこに?』
あ『床下』
私『あー・・・いってらっしゃい』

あつお君は消防士。レスキュー隊に12年のっていた男なだけあって、根性とガッツ、そして行動力がすさまじい人なんです。

さらに危険察知能力がバカ高く、安全対策にぬかりない。

その彼が真っ暗な床下に潜ると言ったら絶対に潜るし、屋根に登ると言ったら絶対に登るんです。
そういう人間なんです。

さっそく洗面所の床下点検口からもぐるべく、ぱんついっちょになり、手袋やらライトやら装備をととのえると、くら~いくらい床下へと旅立っていきました。
『オレが入ったら、点検口のフタ閉めといてね』
と言い残して。

なぜフタを閉めるかというと、床下にはおそらくGがいるからだそうです。

そんなおっそろしい世界に夫を送り込むのは気が引けましたが、ま、あつお君なら大丈夫なのでしょう。

あ、そうそう、一消防士にすぎないあつお君が床下に潜ったところで一体何がわかるっていうんだ?と疑問を持った方もいらっしゃるでしょう。

おっしゃるとおり、あつお君は建築構造に関しちゃ素人です。

でも、消防で仕事をしていると、ある程度は家の構造に詳しくなるそうです。
構造を知っているからこそ、火がどのようにまわるのか、火災の時にどこがどうなると家屋倒壊の危険度が上がるのか等々わかるのでしょうねえ。


それにね、あれが大好きなのです。

ほら、視聴者から募集して古いお家を匠の手で劇的にリフォームして、そのビフォーアフターを比べ
『なんということでしょう~!』ってやるやつ。

あれをとても真剣に見てますな。

今住んでいる家の間取り図、あつお君が書きましたからね。
あつお君渾身の間取り図を一目見た設計士さんは
『お!いいじゃないですか~!』と言って、ほぼ手直ししませんでした。

あつお君設計の家、なかなか暮らしやすいです♪

まあ、そんなわけで一人潜っていったあつお君ですが、なにしろこちらからは全く見えないので少し心配です。

そこで、あつお君の気配を探るべく、床に這いつくばって耳をつけてみました。

何か聞こえます。。

床下からガサゴソいう音と共に聞こえてきたのは・・・




狭い床下で懸命に前進しようとするあつお君の息づかいは、床上で聞くとカオナシの声そのものでした。

笑いがこみあげてきましたが、カオナシが頑張ってくれているのに笑い声をあげるわけにはいきません。
がまんして下の世界の様子をうかがいつづけ、しばらくするとカオナシは点検口から戻ってきました。

無事に帰還したカオナシの報告

『強度じゅうぶんです・・・
 あ・・・
 雨の後なのにさらっさらで・・・
 あ・・・
 いい家です・・・
 あ・・・・・・・・・・』

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