前回の続き、最終話です。
学校給食で一番大切なことは何だろうと考えているところでした。
一昔前までは、学校給食において『完食指導』といわれるものが、しばしば行われていたと聞きます。
『完食指導』とは、給食を全て食べ終えるまで居残りさせるなどして、強制的に完食させようとする指導のことです。
そもそも学校給食は、文部科学省が定める学習指導要領によれば『特別活動』という教育活動に分類されるそうです。
ただのランチタイムではなく、食の大切さや食事のマナー、地域の食材に親しんだり地産地消を考えたりと、給食を通して食について学ぶという教育目的があるものなんですね。
でも、完食指導をするかどうかは、先生によって違いますし、給食のときの決まり事もクラスによってまちまちです。
ということは、別に教育委員会から『完食指導しなさい!』なんてお達しが出ているわけでもないんでしょう。
むしろ最近では完食指導の弊害が問題視されてきている様で、検索してみると経験者の苦しみの声が色々と出てきます。
ふう太の先生の場合は、完食できなくても何のペナルティーもありませんでしたが、ネットで調べてみると、子ども時代に受けた完食指導のせいで会食恐怖症を発症し、大人になってからも苦しんでいる人もいるそうです。
『会食恐怖症』は不安障害の一種で、人前で食事をすることに強いストレスを感じ、具合が悪くなったり、友人関係や恋愛、仕事などに支障が出たりするものだそうです。
完食指導のせいで、後々何年も不安障害で苦しむなんて、冗談じゃありません。
そして、
『もぐもぐタイム』。
聞いたことありますか?
『もぐもぐタイム』は、給食時間のうち、もぐもぐタイムに設定された時間はおしゃべり禁止で、黙って食べましょうというものです。
もぐもぐタイムというと、なんだか可愛らしい響きにも感じますが、
別名『黙食』。
要は黙って食えと……
短い給食時間でおしゃべりに花を咲かせていると食べきれず残飯が増えてしまうので、一定時間は食べることに集中しましょうというのが理由らしいのですが…
う~~~ん……
給食を無駄に残してしまうのは、たしかに好ましくはない。
でも、おしゃべりに夢中になるあまり、食べきれず残してしまった子どもは、
あー、もっと食べたかったのに!
しゃべりすぎていると全部食べられなくなっちゃうんだな💦
明日はもうちょっと食べよう。
それにしても、もったいないことしちゃったな…💦
てな具合に、給食中の会話と食事のバランスについて学んでいくものではないでしょうか?
ふう太は3年生で今の学校に転校してきました。
転校前に通っていたところは全児童600名超えで、それなりに大規模校でしたが、
今の学校は全児童80名程度の小規模校で、あまり規則で縛らなくても自然とまとまるほのぼのとした雰囲気の学校です。
もちろん人数の多い学校にはそのメリット(パワフルで活気がある、人数が多いからこそ6年間で多様な人間関係を学べる)などありますが、
いまの学校のほうが水着のデザインやら、上履き袋の形状やら、体育着の下に肌着は着るなやらといった規則が圧倒的に少ないです。
体育着のゼッケンすらない。
給食の指導も、家庭のようなごく一般的な指導をする先生が多い印象を受けます。
ふう太の偏食の話に戻りますが、今の学校では『食べるべき』という圧を感じたことはないとふう太は言います。
そういう安心できる環境で、ふう太なりに苦手なものも1口だけは食べてみるなどチャレンジをしてきました。
そして、いまはかなり色々なものが食べられるようになりました。
苦手なものはあらかじめ少なめによそうこともあるものの、完食できることも多いそうです。
残しても先生は咎めたりしないし、コロナ禍でしばらくは静かに食べざるをえなかったけれど、給食中の雰囲気はとても楽しいものだったようです。
味覚は一朝一夕で育つものではありません。
けれど、偏食のひどいふう太でも、ゆっくり時間をかけて食べられるものを増やしていくことはできています。
でもそこに、完食指導やもぐもぐタイムといった縛りが入ると、給食が苦痛なものになってしまいかねません。
子どもの成長は、それぞれのペースがあることを、忘れてはいけないと思うのです。
同じように練習したとしても、
縄跳びが得意な子と苦手な子、
九九が得意な子と苦手な子、
走るのが速い子と遅い子。
いろんな個性を持った子がいます。
食に関することも例外ではありません。
食べるのが得意な子もいれば、苦手な子もいます。
食べることは好きでも、量は食べられない子もいますし、時間のかかる子もいます。
そういった子たちに圧をかけるのではなく、待ってあげてもいいのではないでしょうか?
残してしまうからといって、その子が食べものを大切に思っていないわけではないのです。
生まれつき何でもいけるくちのぽよちゃんタイプもいれば、生まれつき苦手なものだらけのふう太タイプもいるのです。
でも、ぽよちゃんタイプは、自分の努力でその味覚を勝ち取ったわけではありません。
たまたまラッキーな舌で生まれてきただけです。
だから、偏食の子のまわりの大人たちは、叱るのではなく、
『あ~、ちょっと厄介な舌で生まれちゃったね。でも大丈夫!ぼちぼちやろうぜ♪』
と、ゆったりとサポートしてあげられたらいいなと心から思います。
~偏食?好き嫌い?感覚過敏? 《完》 ~